何かが……何かがまだ、終わらずに浮いたままの気がする。地に着いていない。
何かが見えないままだ。
だから、俺はいまだに藍を忘れられないのか。
藍ともう一度一緒にいたい、と思ったのは本当だった。結婚している…藍はそう言ったけど。
まだ、終わる気になれなかった。
俺は高校の同級生などに片っ端から電話して、藍が結婚して居を構えている住所を聞き、その場所へ向かった。
自分の行動に意味があるのか。そんな疑念も、やはり自分で分かっていた。
だが、俺は動かずにいられなかった。意味があるか分からない。藍と会えるのかも分からない。だが、どうしてももう一度話さなければ、全部終わらないように思えた。
藍が夫と住んでいるらしいアパートまで来た。だが、藍と同年代の俺が夫と鉢合わせするのは良くない。平日の昼間なら、夫はいない可能性が高いと考え平日に来たが、平日でも確実にいないとは限らない。
どうしたものかと、俺が部屋の扉の前で考えていると、二つ隣りの部屋の扉が開いた。