視線の先には両手を窓に押しつけ目を見開いた雅がいた。
「………………!!!」
雅が何か言ったが俺には聞き取れなかった。
俺はもう一口、マンゴーを口の中へ放り込んだ。
俺は雅の挙動を目で追った。
雅は俺を指差した後、バタバタと走り去った。
その数秒後、店のベルが激しく鳴り響き、雅が現れた。
そのまま俺の手からスプーンを奪いとり叫んだ。
「あんたなにしとん!」
「何…って…、パフェ食べてる。」
「は。あんたカノンはどうしたん?」
「………………カノン?」
カノン?
俺は目前のぽかんとした顔で雅を見つめるカノンの母親をみた。
「!!!」
俺は雅の肩を軽く叩いてそのまま店から走り出た。
一度、店の外の絨毯に足をとられ、転びかけた。
雅が後ろでパフェは任せとき、と言ったのが微かに聞こえた。
あー…
もう、大馬鹿。
馬鹿な俺は雅がいなければパフェの何倍も大事な恋人を泣かす所だった。
カノンの顔が何度も浮かんだ。
会える
会いたい
早く
速く…
病院の自動ドア開閉の遅さに舌打ちをせずにはいられなかった。
苛立ちながらロビー右側すぐに見つかった階段に飛び込んだ。
あてもなく、ナースステーションの前を走り去ると30代前半くらいの看護士が出てきて俺の腕を掴んだ。
「院内では走らないで下さい。お年寄りの患者さんもいらっしゃるんですから!」
「すみません。」
早く腕を離せ。
じれたように腕を振り払った。