死の運命を知りつつ、1年前の俺と今の俺、何が違う。
今の俺に、死にゆく事を止める事のできない俺が、何をできるのだろう。
神谷は、俺に会いに来た為にこの世から消えた。
言えなかった。
俺の気持ち、伝えられないまま…。
神谷が俺をどう思っていてくれたのかは分からないけど、もし、今の俺にできる事があるのなら…。
「俺…神谷の事が好きだったんだ」
無意識のうちに言葉がこぼれていた。
神谷は何も言わなかった。数秒の後に、やっと
「ありがとう…」
とだけ言って、電話は切れた。
1年前の彼女のその後がどうなったのかは、俺にも予想がつかない。
ただ、受話器を置いて、俺は声をあげて泣いていた。ずっと、ずっと。