「3万貸せ」家に入ってくるなり男は言った。この時からかもしれない。麻衣が地獄に落ち始めたのは・・・。男は麻衣が高校生の時から付き合っている彼氏だった。2歳年上の長身で、結構モテル男だった。
「3万なんて今お金持ってないよ」
「じゃあ今日の夕方に俺の銀行に振り込んでてね」
男はそう言いながら自分のズボンを下ろし、下半身を麻衣の顔に突きつけた。麻衣は無言で男の下半身に顔を押し付け舐め始めた。
恋は盲目・・なんて言葉があるが、この時の麻衣は男の本当の姿が見えてなかったのかもしれない。
「3時までに振り込めよ」
早々とズボンを履き、男はそういい残して出て行った。麻衣はすぐに口をゆすいだ。こういう関係になってどれくらいだろう。麻衣を追っかけて都会に出て来た田舎の男は変わってしまった。夜のネオンを浴びたせいだろうか。
麻衣自分で分かっていた。体、お金、それ以外麻衣を必要とするのはもうない事を。それでも麻衣は頭に残る男の優しい記憶に恋をしていた。