照葉

関谷 沙椰  2007-03-25投稿
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「何してるんだ?」
その声に私ははっとした。
「前いた所の事でも思い出してたのか?」
「…違うよ」
私は祐利の言葉を否定した。
「あと、一時間なんだなって、思ってただけ」
「何を今更」
「それでも…ね」
「まぁ、確かにそうかもな」
彼は私の顔を見た。
「王家の姫が実の叔父を殺そうとしてるなんてさ」
「殺す気は無いと、何度言ったら分かるの」
「さて、殺さずに済むかね」
「祐利!」
「はいはい。黙ってりゃ良いんだろ」
彼は肩をすくめた。
分かっていた。
血を流さずに済んだ革命がどれだけ少ないか。
そして、今私の味方が祐利しかいない事。
この場にいる仲間達は皆、私自身を慕っている訳ではない事。
革命に失敗したら終わりだ。
祐利はさっき黙っていると言った通りその後、一言も話さなかった。
そのうち、突入一分前になった。
「んじゃ、行きましょうかね。照葉姫」
彼はおどけた口調で言った。
「いざとなったら守護魔、呼び出せよ」
「分かってる」
私達は予定通り、王の寝室へ向かったが、そこに王の姿は無く、大勢の兵士達が私達を待ち構えていた。
「げ…」
祐利はそれを見るなり、踵を返した。
私もそれに倣う。
途中、祐利が私の方を向いた。
「おい!ルエ呼び出せ!」
「わ、分かった」
走りながらも、大きく息を吸う。
「ルエール!」
「何…?」
夜だからか、不機嫌そうな声がした。
「私達、運んで!どこでもいいから、安全な所!」
「はいはい」
次の瞬間、私達は見たこともない所に立っていた。
「ここ…どこ?」
「知らね。場所、指定すれば良かったのに」
「そんな余裕無かったもの」
「助かったには違いないみたいだけどな」
「…皆は大丈夫かな?」
「大丈夫だろ。何しろ俺等の突入の密告したのは、あいつらだろうしな」
「…えっ?」
「気付かなかったのか。普通の人間は剣術なんか知らねぇし、俺等の作戦が筒抜けだった。もし、密告したのが少数だったとしたら、作戦通り、別の所でも爆発騒ぎが起きてたはずだろ?たぶん、あいつらは王の兵士の一部だ」
「そんな…」
「それで、あってると思うぜ。…ところで、」
そこで彼は言葉を切った。
「ここはどこなんだ?」



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