俺たちは襲い掛かってきた猫科の『キャステ』という獣を撃退した後、再び山道を進み始めた。
「……なぁ、フロン?」
「はい?なんですか?」
俺は山に入るときからの疑問をフロンにぶつけてみることにした。
「なんでそんなに必死なんだ?」
確かに場合によっては人命にすら関わってくる事態なのは俺も十分分かっていたが、聞かずにはいられなかった。
「……」
黙ったまま立ち止まるフロン。
「あるんだろ?ここまでして無事でいてもらいたい理由が……」
俺がそう言うとフロンは静かに言葉を紡ぎだした。
「今から3年程前に、この山で飛行艇の墜落事故がありました……」
山道再び進みだす。
「10人近く乗っていた乗員は墜落時の衝撃でほぼ全員が死亡。生き残ったのはまだ幼い少女が一人だけでした」
「……それは……」
俺は気付いていたが口は挟まずにいた。
「少女は命は拾ったとはいえ足の骨を折るなど重傷でした」
フロンはただ淡々と話を続けた。
「少女は炎上する飛行艇から逃れ、一人山道を進みました。……3日程歩いたでしょうか。心身共に極限にまで達していた少女は力尽き、倒れました……」
「そこを助けられたってのか?」
俺が言うとフロンは頷いた。
「だから私は恩を返す意味でも、二人を助けねばならないのです」
フロンのその言葉には力強さが宿っていた。