『連続猟奇殺人事件』
テレビをつけると、そんな見出しが目に入り、俺はため息をついた。
「この事件がなけりゃ、実家に帰ることもなかったな…」
テレビを眺めると、無差別殺人、死体を切り刻む残虐な手口など、事件の異常性を示す言葉が並んでいる。
「四人目の被害者か…」
半ば煽るように報道される記事に、俺は偽りな平和を実感した。
昔だったら、こんな記事は検閲でもみ消されていたに違いない。
国民の士気を削ぐ…と言う名目で…。
被害者の中に『倉冨佑一』と言う名前を見つけて、俺はかつての親の顔を思い浮かべた。
そう、あれは一週間前――。
高校を卒業したまま次の職にも就かず、ボロアパートを借りてバイト生活をしていた俺に―――。
何ヶ月かぶりで、親父が会いに来てくれたことが、全ての始まりだった。
「急に訪ねてしまって、悪いな、正志」
「悪いと思ってないから来たんだろ」
元来、人と接するのが苦手な自分、親だろうとそれは変わらない。
だが、高校卒業からバイトに就くまで、親父にはかなりお世話になった。
暇人な毎日を送っていた自分には、ありがたい来客だった。
だが―――。
「猟奇殺人?」
「そう。この地区の連続猟奇殺人事件…いま世間は蜂の巣を突いたような騒ぎだ。知らなかったのか、正志?」
生憎、んなことには興味がないもんで……。
「知らんな。まず新聞とか取ってないし」
テレビも一応あるが、ニュースなんてまず見ない。
「そうか。まぁ、こんな生活をしていれば、それも無理はないかも知れないが…」
呆れるなら金をくれ。人生できる限り楽して暮らしたいんだ。
「まぁいい…中でも、この事件は極めつけだぞ。一月もしない間に三人も殺しやがった」
少し微笑んで話す親父。
「三人…か」
その三人に選ばれなかった俺は幸運だね。
「発見された死体は、揃って異常な有様だ。日本で、ここまでの猟奇事件は珍しいな…」
まず猟奇事件って時点で珍しいから。
「お前、結局何が言いたいの?」
そんな俺の問いに、幽かに苦笑して、佑一は肩をすくめた。
「それがね…お父さんその殺人鬼に狙われてるんだよ」
それから数日後
世間を騒がす猟奇殺人犯は
四人目の被害者を手にかけた