二人は向き合いながら硬直している。
どちらも驚きを隠しきれない。
「賢・・・なの?」
女の子が口を開く。
「ということは・・・裕美・・・なのか?」
向かい合った女の子の目には少し涙が滲む。
「よかったぁ〜もう会えないかと思ったぁ」
女の子が泣きながら賢に抱き着く。
賢は抱き着かれて少し顔が赤らむ。
それはそうだ幼なじみと言っても年頃の女の子だ恥ずかしくない訳が無い。
取りあえず女の子が賢の幼なじみの高橋 裕美であることは確定した。
賢はそっと裕美を抱いてから離す。
思い出したのだ。
まだ大分後ろの方だが、道具屋の店主が追って来ている。
賢は木に刺さったレイピアを引き抜き、立ち上がる。
「走れるか?」
賢が聞くと裕美は涙ながらに頷く。
「待てー!」
さっきの店主の声が少しづつ近くなる。
「行くぞ」
裕美はまた頷き、賢と一緒に走り出す。
流石に陸上部だけあって足はかなり早く、二人はあっという間に道具屋の店主に200?以上の差を付けた。
店主は二人の小さくなる影を見ながらスピードを落とす。
だが、二人は店主を振り切った事など忘れて、会えた喜びを噛み締め、笑顔になりながら何百?も走り続けた。