SKY・BLUE

刹那  2006-01-29投稿
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「拓海!」

「母さん。」
「すいません。この子が何かしましたか?」

耳元で母はこっそり呟いた。

『5階の501よ。早く行きなさい。』

俺は母さんに看護士をまかせ階段に走った。


母さん、なんで二階にいたんだ。
そうか、俺を探してたのか…

俺は苦笑いを噛みしめた。
階段は焦って登るものじゃない。
俺は何度も転び落ちそうになりながら5階にたどり着いた。
目指す部屋はすぐにみつかった。

壁には『音滝 カノン』とかいたプレートがあった。文字は新しく、ペンの黒さが力強かった。


俺の足が止まった。
真っ直ぐ駆け込むと思っていたのに。
正直に言うと怖かった。
カノンの顔がまた浮かんだ。
俺は深く息を吸い込み力をためた。
右足を一歩出す。
なんともない。
左足を一歩出す。
なんてことはない。

心臓の鼓動がやけに響く。
俺は間もなく、細く、力の抜けた、けれど確かなカノンを見つけた。



カーテンを手で押しやり滑り込むようにヘッドの側に立った。

「カノン…」
俺はカノンの青白い顔を撫でた。
ヒヤリとした感触に一瞬、息が止まったように感じた。

閉じられた瞳からは生気が感じられない。

でも生きている。

カノンはいつか目を覚ます。

俺はヘッドのすぐ横の壁にもたれかかった。
目前にだらりと垂れるカノンの手を両手で包み込むように握る。

「カノン…。待つよ。俺、いつまでも待つから、必ず目を覚ませ…」




夜。
きっと真夜中。
頬に心地よい感覚を得た。暖かい。


《拓海…………………》

《……………カノン。》

《おはよ。》
《馬鹿。俺の台詞だよ。》《はは。心配した?》
《心配した。》

《………………ごめん。》
ごめん。

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