ぶつかったもの…それは、背の高い男だった。
「…いてぇ…」
男はこちらを睨み、つぶやく。
私は春紀とその回りの女共にいらついていたので、その男を睨み返し、その場を去った。
麻衣が後から追ってくる。「美咲!美咲!ちょっと待って!」
麻衣に引き止められ、足を止める。
「いったいどうしちゃったのよ?」
この問いに一つため息をついてから私は答える。
「…三年の相原春紀は、私のイトコなんだ。昔から女にモテるからさ〜アイツ。学校で仲良く話しかけるもんならいらぬ誤解をまねき、上級生の女に嫌がらせされたりすんだよね。だから話しかけんなって言ったのに…あんの野郎…」
私は説明していたら段々腹がたってきた。
「そうだったんだ…美咲も大変だね…。あ!でもだからって、ぶつかった人睨んで、謝らないなんて大人げないよー」
麻衣がたしなめる様に言う。
私は先ほどの事を思い出す。
―確かにあれは感じ悪かったかも…。
「あ!でもあいつも睨んできたもん!てか、誰?あんなやつ見たことないんだけど…」
私のこの問いに麻衣は信じられないと言う顔をする。「えー!三年の神谷葵さん、知らないの?美咲のイトコの春紀さんと同じくらいカッコイイので有名なのに!でも神谷さんは、昔すごい荒れてたらしいし、みんな怖くて近寄れないだよね。」
「…ふーん」
本気で興味がない、私。
「てゆーか、神谷さんに臆さないなんて美咲ぐらいだよー。あ、あと春紀さんもか。」
「春紀?」
「なんか仲良いみたいよ。その二人。って言っても春紀さんが神谷さんに勝手に懐いてるだけみたいだけど。」
なんかその姿を想像する事ができて、少し可笑しくなった。
続く