PERSON OF TASTE《?》

73  2007-03-28投稿
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「詳しいんだね、麻衣。」私は半ばあきれながら言う。
「この学校の女子なら誰でも知ってるって。美咲が変なんだよ。」
大まじめな顔で麻衣は言う。この言葉に私は妙に納得してしまった。
「―確かに変かもな、私。男にそこまで興味がない。」
頭の中で考えていたつもりが、気が付くと口に出していたようだ。
麻衣が心配そうに顔をのぞきこんできた。
「美咲ー、大丈夫だよ!そのうち本気で好きになれる人、見つかるって!」
「…あー、うん。ありがとね」
私は曖昧な返事を返した。―放課後。何だか無性に一人になりたくて、私は校内をうろついていた。
『そうだ。見晴らしのいい屋上に行こう。』
私は足取り軽く立入禁止の屋上に向かう。
入学してから初めて足を踏み入れる場所だ。
ドキドキしながら古びた扉を開く。
―そこには、先客がいた。神谷だ。
私はうんざりとした気持ちになる。
『さっき睨んじゃったからなー。気まずい…』
居心地が悪かったが、向こうはこっちに気付いていないようだ。ヘッドホンを耳につけ、音楽をききながら、スケッチブックに何かを描いている。真剣な横顔に思わず見とれてしまう。
何を描いているのか気になり、気付かれない様に後方から忍び寄り、絵を覗きこんだ。
―そこには、満開の桜の絵が描かれていた。
その絵を見た瞬間、無性に胸が締め付けられた。
地面に座り込み、顔を覆う涙が出そうだ。
…―私、この桜
ミタコトアル

なぜかそんな事を思い、そこで意識が途絶えた。

どうやら眠ってしまった様で気が付くと屋上に夕日が差し込む時刻になっていた。当然、そこにはもう神谷の姿はなかった。しかし、私の体に、大きな学ランがかけられていた。
「…起こせよ…」
私は力無く呟いた。

続く



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