ふと気付いた事があった。―この学ランどうすんのよ!?
私は困り果て、明日教室に届けなくてはという結論にたどり着いた。しかし、きっと上級生の女の反感を買う事は、間違いないだろう。だけど、仕方ない。私は一つため息をつき、誰もいない屋上を後にした。
次の日の朝、私は三年の教室がある校舎に向かう。麻衣に神谷のクラスは一組だと教えてもらった。教室の前まで行き、中を覗き込む。しかしまだ神谷は来ていないようだった。
「あんれー、美咲。うちのクラスに何か用?」
振り向くと春紀がいた。
「いや…ちょっと神谷っていう人に…」
「神谷?」
春紀は意外だった様で驚いた顔をする。しかしすぐにいつもの笑顔に戻り続けた。
「神谷ね〜あいつ遅刻常習犯なんだよね。伝言あったら俺が伝えとくけど?」
春紀に学ランの事を頼もうとした瞬間に
「ん?あ、神谷じゃん!」と春紀が私の後方を見て声をあげる。
反射的に私は振り返った。そこには紺色のパーカーを着た神谷が立っていた。
「神谷がこんな早いなんてめずらし。てか制服どしたんだよー。また風紀の伊藤にどやされんぞ」
春紀は神谷をからかう様に話しかける。
「んー、眠ぃ…。昨日ずっと絵描いてたから一睡もしてねぇ…」
神谷はぼーっとしてどこか一点を見つめている。
「あー、だから今日早かったのね。…ってアホか!そんな不健康な生活だめだから。あ!てゆーか神谷お前にお客さんだぞ。」
思い出した様に春紀はそう言い、私を指し示す。
神谷の鋭い目が私の姿をとらえる。私は何故か胸の鼓動が高鳴った。
続く