PERSON OF TASTE《?》

73  2007-03-28投稿
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「…えっと…あの」
神谷を前にして妙に緊張している自分がいた。当の神谷は……
「誰?この人?」
と私を指差し、ぬかしやがった。どうやらぶつかった事も学ランの事も忘れているらしい。私は急に馬鹿らしく思えてきた。
「…これ。制服。昨日かけてくれたんでしょ?ありがと」
私はあまり感情を込めずに言い放ち、手に持っていた紙袋をつきだす。
「あ〜、あん時の昼寝娘かぁ。」
神谷は納得した様な顔をする。
「昼寝娘?何それ?」
春紀がさも楽しそうに聞いてくる。
「なんか、昨日俺が屋上で絵描いてたら、気付いたら後ろで寝てた。夕方になっても起きなかったんだけどあんまり気持ちよさそうだったから、そのまま放って帰った」
「起こしてやれよ!」
と私の気持ちを代弁するかの様に春紀がツッコミを入れる。
「…でも寒そうだったから学ランかけてあげた。」
「おー、優しいな。お前」春紀は頭一つ分高い神谷の髪の毛をよしよしと犬にするように撫でる。
「じゃあ、それだけなんで…」
私はその場を去ろうとする。
「えー、美咲せっかく久しぶりに話せたのにもう行っちゃうのか」
春紀は子どもの様に唇を尖らせる。
「…また今度ね」
私は愛想笑いを浮かべる。そんな時、女の甲高い声が聞こえてきた。
「神谷〜!おはよ〜お弁当作ってきてあげたよ。いつも不健康そうだからー。愛妻弁当?みたいな」
キャハハと笑いながら神谷の腕に自分の腕をからませる。
「…どうも。」
神谷は無表情に返す。
何だかその様子を見て、無性に苛立っている自分がいた。
「…じゃ、私帰るから。」私はそれだけ言い残し、逃げる様にしてその場を去った。春紀がその時、今まで見せた事のない程の真剣な目で私を見つめていた。
続く

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