私は少しの間その綺麗な笑みに見とれてしまっていた。
「腹減った。」
突然、神谷が発した男子高校生らしい言葉にハッと我にかえる。
「あ、そういや今日もらった弁当あんだ。ラッキー。」そう言って神谷は鞄の中をゴソゴソあさりだす。
私は今朝の光景を思い出していた。
「今朝もらったお弁当、お昼に食べなかったの?」
私は何気なく尋ねてみる。「いや、食ったよ?今日三人にもらったんだよ、弁当。」
飄々と神谷は答える。…こいつ、“女の敵”だ。
「お前も食うか?」
私は渇いた笑みを浮かべながら首を横に振る。
「モテモテですなー神谷」私は皮肉混じりに言う。
「は?何が?てか先輩に向かって苗字呼び捨てか。まぁ、別にいいけど。」
タコさんウインナーを口に含みながら神谷は言う。
「その弁当の製作者達の中に本命がいんの?」
「いや、別に。俺、そいつら苦手だし。」
「は?」
意外な発言に私は目を丸くする。
「やたらベタベタさわってくるし、うるせぇし、香水くせぇし。」
神谷はあからさまに嫌な顔をする。
「…じゃあ、何でお弁当もらってんのよ?」
私の素朴な疑問にあっけらかんと神谷は言い放つ。
「食い物に罪はねぇーだろ?」
私は思わず笑ってしまいそうになった。しかしあまりにも不謹慎だと思い、下を向き、笑いを堪えようとする。
ふいに目の前に影がさした。私が顔を上げるとそこにはドアップの神谷の顔。私は、突然の事で慌てふためく。
「…か、神谷?な、何?」不覚にも赤くなっていく顔。神谷は少し何か考えた後で、私から顔を離す。
「…何か見たことある、お前。」
神谷が意味深な発言をした時に騒がしい声が聞こえてきた。
続く