それは時間にして五分ともかからなかったが結果はこの上もなく深刻な物であった。
「ほう?返せと?何を?君の女をか?キャハハハ!何言ってるの?返しても良いけどさあ、今頃もう廃人だろうよ!この僕達があれにはノン・リスクドラッグの味をたっぷり教えてやったからねえ」
リクの目の前では今しがた入った二人の若者とさっきの騒ぎっぱなしだった一団が険悪な言葉の応酬を始めていた―否、より正確には、極正当な主張がどう考えても異様な返答とせせら笑いでいなされているのだ。
「兎に角解放しろ!さもなくば司直が動くぞ」
彼女を奪われ連中に輪姦されたと追求する二人組側の台詞に又しても返されたのは嘲笑のみだった。
「一々うるせえんだよ。平民。お前どういう教育受けたんだ?下賎の分際で粋がるなよ」特に星間諸侯太子党のリ―ダ―格と覚しき青年は実に挑発的だった。そして―\r
リクは余りの眩しさに目を瞑った。
けたたましい衝撃音と共に幾色もの閃光が一面を走り回り、それがようやく収まると、おそるおそる目を再び開けたリクの視界には、うつ伏せに倒れ込んだ二人組の青年が、背中中に開けられた穴から焦げ臭い湯気をたてているのが映じた。
そう、太子党の連中がいきなりハンドレイ(光線銃)で彼等を撃ったのだ!
それも何十発も。
しかもリ―ダ―格の青年は更に常軌を逸した行いを始めた。
「おい。お前、まだ何か言えるのかよ。無礼な奴だな。こっちに顔向けろよ。向けれるんですかあ?ははっ!」
殺した相手一人一人に馬乗りになり、そうわめきながら、あきたりぬかのように彩色高密度電磁波を次々と浴びせ続けたのだ!
そして程なくして太子党達は笑い声と奇声を残してそこを離れて行った。
船内警備が駆け付けたのは通報を受けてから三0分も経ってからだった。
物理的には五分以内で来れる彼等の足と義務感をここまで鈍くしたのは星間諸侯の擁する政治力以外の何者でもなかった。
星間諸侯太子党のこう言った振る舞いがやがて最外縁征討軍全体を二分する大問題に発展するまでにそう時間はかからなかった―