小学5年の冬。
母の胃癌が、また発達していった。母は、体を動かすことも、しゃべることもできなくなった。そんな母を見るのが、私は辛かった。でも私は、母の病気は治る、と信じ続けた。
父は私に「お母さんにアイス買って、食べさしたってな。」と言った。私は、病院の売店でアイスを買い、母に食べさせてあげた。少しずつ、少しずつ、母の口に入れてあげた。母は、食べるというより、舌を動かしてなめていた。だが、全然食べなかった。そして、母の口が「ありがとう」と動いたように見えた。
これが私への最後の言葉となった。
12月31日深夜
母は、私と兄のいない間に、息をひきとった。
私は母の死を知ったとき、ショックで何も食べることができなかった。そして、私は部屋で一人泣いた。
1月4日
母の葬儀が行われた。
たくさんの人が来てくれた。私と父と兄は、焼香をする人たちにひたすらお辞儀をしていた。泣きながらお辞儀をしていた。母に花を入れているとき、兄が私に「泣くなや。」と言った。私は、少し泣きやんだ。そして、外を見ると雪が降っていた。このとき私は「空が泣いている」と思った。
私の悲しみは、これで終わりではなかった。
温もり?終わり。