ヤス#22

チャーリー  2007-03-30投稿
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ヤス#22
「ふおっ、ふお、ところで、龍はお前に気付いておる。さて、どうする?」
「に、逃げられないのか?」
ああ、無理だな。隠れても無駄じゃ」
「俺は…あの龍に喰われるのか…?」
「さあ、な…お前次第だ」
ヤスは恐怖で、横にいる一見不気味なサトリすら頼りにしたくなった。
「サトリ…助けてくれ」「何を言うか…それとも、お前はやはり、単なるハナタレか」
サトリはヤスが最も嫌う言葉を口にした。
「俺は…ハナタレではない!」
「だったら、こそこそ隠れずに表へ出ろ」
サトリが言うことが本当なら、この南竹に隠れていても、確かに喰われてしまいそうだ。どうせ、喰われるなら、男らしく喰われようと思った。
「分かった!喰うなら、喰ってみろ!」
ヤスは磯カギを右手に握り締め、水辺に出た。龍がゆっくりと近づいてくる。大波が立ち、ヤスの体にもしぶきがかかった。その頭は十メートルはあるだろうか。長い髭が艶やかに光り、鞭を打つようにしなっている。金色の目は、ヤスの知るどんな物より光りを放っていた。二本の大きな角が天を向き、耳まで裂けた口には、無数の尖った歯がびっしりと並んでいた。ヤスは失禁しそうだった。

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