我慢するのは,結構つらかったりする。
かなり限界に近いかもしれない。
日曜日の昼下がり。私は,近くの河原の橋の下で合唱の練習をしていた。今年は,『春』という曲を歌う。
「♪この気持ちはなんだろう〜♪」
……………
本当に,この気持ちは何なんだろ…。
急に悲しくなってきた。心が痛い。
痛い。痛い。
「おっ,倉田ぁ〜っ!」
聞き覚えのある元気な声が私を呼んだ。
雅史だ。
雅史は橋の下に降りてきた。
「よっス〜。合唱の練習かっ。頑張ってんね」
私は声をかけられたが,そっぽを向いていた。
「ん?どした。倉田…」
………っ…っ……
「…泣いてんのか」
…っ…………っ…っ…っ……
すると,雅史は,こんなことを言い出した。
「泣け」
私は涙をゴシゴシふき,振り向いた。
「何それっ…」
私は雅史にずんずん寄った。
雅史は,真面目な顔をした。びっくりして,私は一歩下がった。
「つらかった?……ためてたんでしょ……我慢してんなよ」
「え」
「俺,倉田のこと,すごい心配してたんだから」
その瞬間,私の目から熱い涙がこぼれた。
…たくさんあふれてきた。
「…あ…」
どんどん涙が出てくる…。
だめだ!
雅史の前で,こんな姿を見せられない…。どうしよう。
「あんまり抱えこむな」
雅史の胸板が,私の顔のあたりについた。
雅史の両腕が,肩を 優しく包んだ。
雅史の心臓がドキドキしているのが伝わってきた。
雅史の服に涙がつかないように,顔を横向きにしながら泣いた。
雅史…雅史…。
つづく