「うわわわっ!な、何しやがんだこのクソオヤジ!」
「ふぅむ…。
口の減らん奴はな、寿命が縮むのが道理であろう?」
「いいから早く降ろせ!」
「ほう、左様か」
中原健次の怒声を耳にした朱雀は、地表がきれいに丸く見えるほどの高みで掴んでいた背中をパッと離す。
「お、おい!マジかっ!うわああああぁぁぁー…!」
絶叫の尾をひいたまま隕石のように落下する健次。
そのざまを冷ややかに眺めていた巨大な鳥は、頃合いを見計らって急降下を開始した。
「まぁ、…良い薬になったであろう」
くぐもった声で呟くと、朱雀は健次の体を鋼鉄のような鉤爪でガシッと捕えた。
「お二人とも水を自在に操れるんですね?」
「ふん、…あれは霞を操ったに過ぎん。
水を意のままに出来るのは玄武だけだ」
「私ゃ、亀やら蛇の親類ですから。
水との付き合いは
長いんですよ」
“ゴゴゴゴオオオ…”
突如、地鳴りと共に突き上げられるような衝撃が襲い、玄武が全容を現した。
「…何だかビルの屋上にいるみたいですぅ〜…」
「由紀恵!!…あ、あたし高所恐怖症なのよオ〜」
あの玄武のお爺ちゃんがこんな巨体の持ち主とは、夢にも思わなかった。
あまりの高さに目がくらむ私(島崎愛)…。
隣に並んだ新幹線ほどは優にありそうな青竜が、鉛筆くらいに感じるスケール感に、
『人は見かけによらない』
という諺を思い出す。
それはそうと、その頃、健次が大変な目に遇っていたようだ。
口は災いの元、…である。