世界は幾つもの数がある。“パラレルワールド”だ。
もし、今現在の世界とは別の世界が在るのなら、俺直ぐにでも、その世界に行きたい。
しかし、そんなことは本の中での話だ。
俺が今見ている塔がその理由だ。
天を貫く塔。ある架空小説に出ている“バベルの塔”と言うのがあるが、正にそれが当てはまる。
人は智と力を求めた…天はそれを許容した。そして人は手に入れた。
それを例えるなれば“リンゴ”。
腐れかけたリンゴ、腐れたリンゴではない。“腐れかけた”リンゴだ。
人は魔法を得た。しかし、不完全な魔法は要らぬ副産物を創造した。
怪物・化物・魔物と色々表現出来るが、人の不完全な魔法は周りの生態系を著しく変えた。
人は天に助けを求めたが天は応じなかった。人が犯した業が人を襲う。それを天は無視した。
しかし、人はしぶとく生きた。少しの天上人の力を借りて…。
人は不完全な魔法を完全な魔法にするべく研究をした。
天は嘲笑う。同じ時に生まれ出た自分達より低度な進化しかできなかった人を…。
天は侮っていた。天は完全で在るが故に進化を止めた。しかし、人は不完全で在るが故に進化し続けた。
不完全で在るが故に低度で粗くて弱小だが、不完全で在るが故に高度で精密で最強になるのだ。
天は恐れた。人は求めた。不完全を恐れた。完全を求めた。
これは遠い昔の噺だ。今では天界との交渉はおろか塔に入ることさえ難しい。
物思いに耽っているとポケットに入れた携帯電話が震える。
携帯を開きながら街を見れば、其処にはビルが立ち並んでいた。 人は進化した。