「ぐっ・・・!!」
敬は勇の蹴りにバランスを崩し後ろに倒れて行く。
『まずい・・・』
敬はさっき勇がした様にブリッチで勇の攻撃を躱そうとした。
だが敬はある事に気が付いた。
勇と敬の戦闘能力はほぼ互角だった。
しかし勇にはあって敬には無いものがある。
勇のオニの左腕はナイフの様な指がある。獣の様に鋭い鉤爪があるわけでは無く、指そのものがナイフの様に鋭く変化していて剣道の様に斬る事よりもフェンシグの様に突く事に特化している。
リーチは短いが扱い易く切れ味もある。
一方敬のオニの腕は日本刀の様な形をしている。なので突く事より斬る事に特化している。切れ味は普通の人間を真っ二つに斬り裂く程の切れ味がある。
そして刃渡りは約1メートルと長い。しかも両腕がオニ化している。
どう考えても勇の方が不利だと思われるが勇にはあって敬には無いものがある。
敬は肘から下を刀に変化させている為に、自由に動かす事の出来る5本の指が無かった。
つまりこの腕のままブリッチをすると刀の先端部分が床に突き刺さり身動きが取れなくなってしまうのだ。なので敬が勇の攻撃を避ける為にはオニ化した腕を人間の手に戻す必要があった。
しかし敬にはそんな時間は残されていなかった。
勇の突きは敬のすぐそこまで迫ってる。
ガードする暇は無い。
そう確信した敬は後ろに倒れて行く状態から左腕で勇の右胸を切り裂いた。