「うるさいなぁ〜。」
えりかの朝は一歳半になった和希の泣き声で目を覚ます。
和希は前の夫、高貴との間にできた、えりかの子供。
時間は7時。
「うわっ!2時間しか寝てないし・・・。」
あくびをしながら和希の様子を見る。
涙と鼻水だらけの顔にキスをする。
「おはよ」
えりかが笑うと和希も笑い返す。
(涼はまだ寝てるかな?)
(涼に会いたい。)
頭の中は涼の事でいっぱい・・・。
保育園に和希を連れて行くとそのまま夕方までバイト。
(涼、目ぇ覚ましたかなぁ・・・。涼もアタシの事考えてくれてる・・・?)
(会いた〜い!!)
涼の事がアタマから離れない・・・。
夜の9時からは親友の沙耶のお店でバイト。水商売なので、両親には秘密。
「ゴメンねっ。行って来ます。」
後ろめたさを感じながら和希を託児所へ。
沙耶のお店の前で深呼吸するえりか。
「おはよぉ〜。」
いつも通りにお店のドアをあける。
「おはよ。」
沙耶が答える。
えりかは沙耶と目があわせる事ができない。
えりかが涼に気持ちを伝えた夜から一週間経った。
あの夜から、えりかと涼が会っている事を沙耶は知らない。
何も知らない沙耶はえりかに涼の話しをする。
(沙耶は涼の事好きなのかな・・・。わかんない。気に入ってるだけ?)
(聞いちゃダメだ。沙耶の気持ち聞いてアタシはどぉするの?もし、涼の事好きだって、沙耶が言ったら?・・・。もう涼から離れる事なんかできない・・・。)
(アタシは卑怯なのかな・・・。)
そんな事ばかり考ながら今日もえりかは涼に会いに行く。