発見された死体は、これまでの事件と同様に、一部が欠損している―――。
恐らく…この犯人は――。
「殺して、食ってやがる」
ぞわりと、悪寒が走る。
大した奴だ。
親父も不幸だったな。こんな変態に殺されるなんて。
化けて出ないことを祈るか。
報道は捜索陣の怠慢を叫び始めていた。
……………。
いずれにしても、俺には関係ない話だ…。
たとえ肉親が死のうと俺自身には関係がない。
今は、目の前の生活に集中しよう。
俺は頭を振って物騒な思念を追い払い、朝食の用意を始める。
ピンポーン…
部屋に呼び鈴のやかましい音が鳴り響く。
時計を見ると
8:00
ギリギリ朝っぱらと言える時間帯。
まったく…誰だよ…。
ガチャ
ドアを開けると、そこには怪しげな二人組―――もとい手帳をひけらかす刑事さんが、俺を待っていた。
あちゃー大家の奴…家賃滞納してるからってこれはやりすぎでしょ。
「倉冨正志だな?」
いいえと言いたいが…。
「そうですが…あんたらは一体…?」
俺の質問を無視。国家権力フル活用だな。
「倉冨祐一と言うのは、貴方の父親ですね?」
「…?ああ、そうだが、それがどうかしたのか?」
「祐一さんが殺害された日、貴方はどこでなにを?」
一人が質問し、もう一人が様子を伺う…なんか嫌な感じの連中だ。
まぁこんな感じの連中が、刑事に向いてるんだよな。実際刑事だし
「あの日は……」
ぜんぜん覚えてませんよ。
毎日同じことの繰り返しだからなぁ、そういちいち覚えてないっての。
「答えられませんか?答えられないと、ちょっと困ったことになりますね」
「困ったこと…とわ?」
俺の飼ってるハムスターを保健所送りにするとか?動物愛護団体が黙っちゃいないぞ。
「………………」
俺の問いを、刑事たちは黙殺する。
そして俺を尋問していた刑事は、もう一人の刑事の方を向いて軽く頷いた。
「えぇ、分かりました。詳しい話は署の方で聞きましょうか」
「は?」
ふざけるなよ犬野郎。国民の権利なめんなよ。
「倉冨正志―。猟奇事件の重要参考人として、署まで動向していただきます」
国民の権利も、国家権力の前では廃法同然らしい。
「動向ね…」
連行の間違いだろ?