携帯に出ると受話器の向こうから罵詈雑言が聞こえた。
この声は親友の声だが…何に怒っているのかメチャクチャに罵声を吐く。
俺は適当にあしらって携帯を……電源をOFFにした。
人が夕陽に黄昏ている時に邪魔が入ると、何とも言えない怒りが込み上げてくる。
気分を害した俺は帰ることにした。
夏の夕方、蝉の声と烏の叫び、暗い雑木林にある一本の道―――これほどスリリングな状況を作り出す帰宅路も珍しい。
俺が通う魔法高等学校には学生寮がある。しかし何を思ったか知らないが、学校と学生寮が離れている。
片や華やかな街の中、片や『え!?こんなところに住んでいるの』と真顔で親友が言うほどの荒れた林。
今すぐ理事長を呼べ!俺は抗議をするぞー!と熱血する俺ではなく、なんとかなるかなと思っている。
林道(約500mくらい?)を抜けると次に444の階段がある。
明らかに狙って作ったな。これを見た親友は眼ん玉飛び出していたな…まあそれもそうだろうなー、最初の四十段はほぼ垂直。手すりと安全ベルトが備えてあるだけでほかには何も無い。
登りきると次は螺旋状の階段。階段一つ一つが薄く広くデカイ!山を四周と少し回ると学生寮に着く。
学生寮は山の頂上にあり、高さは低いながらも景色の眺めは良い。天気が良ければ四海(しかい)の内二海の境界線がハッキリと見える。
天を貫く塔―――“ヘルティカ”と言うのだが、これを中心に海が四つに割れている。外側を囲むようにある大陸も四つに分かれ、反対側の世界はまた別に三つの大陸と大陸を分けた大河、それに繋がる大きな海がある。
俺が居る大陸は“邪犯(じゃぱん)”と呼ばれている…かなり世間体の悪い名前だ。
何でも此処にはある邪神を封印したと言う伝説が名前の由来らしいがな。
いや、俺はよくしらんがな。
その時、壮絶な破壊音がした。学生寮から煙が―――あれ?えらくピンポイントで俺の部屋が綺麗に欠き消えている。
「せんぱ〜ぁい」
学生寮から後輩が出てきた。ロングの銀髪はお嬢様を連想させる。実際お嬢様なんだけどね。
「すみません。魔法で火をつけようとしたら…手違いで圧縮魔法を…てへ」
「あは、あはは、あはははははは!」
舌を出す後輩は可愛いかった。俺は…笑うしかなかった。
「これが部屋です」
ピンポン玉になった部屋を渡された。
「ふーざーけーるなよ!!」
アイアンクローを後輩に咬ます。