自殺自演、、〔五曲〕

ホッチ  2007-04-04投稿
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彼の家までは隣の県まで行かねばならず、電車にて移動する。

通勤ラッシュの時間帯ではないが、座席は空いておらずドア近くで落ち着く、、。

アナウンスが鳴り、お決まりの注意事項が続く。
外へ目を向けると、手荷物を抱えた老女がこちらへ歩いてくる、、見た目七十歳近いであろう。

容赦なくドアは閉まろうとしている、、。

何か思ったわけではない。考えるよりも先にドアに手を当て、閉じるのを防いでいる自分がいた、、。

彼女は私の行動を見、電車に乗り込み軽く会釈した。

電車は進みはじめ、次の駅の名を告げる。
後、車内は雑音のみとなった、、。

トントン、、

背中をツツかれる、先程の老女だ。

「ごめんね、、ありがとう。私なんかのために優しくしてくれて。」

どこかで聞いたセリフ、、。

「昔は当たり前の行為だったのに、最近は皆自分のことしか見えてなくてね、、。

でも、まだ人を気遣う優しい人がいる。
その心をいつまでも大切にしてね。お嬢さん。

本当にありがとう。」

何か暖かいものが胸に込みあげる、、。
『ありがとう』という言葉、、それ一つでなんて救われるんだろう。

次の駅で彼女は降りていった、最後にもう一度こちらに会釈し、、私も手を振り応えた。

曲に合わせるかのよう電車は揺れる、、。
目を閉じ流れる音の景色を想像する、やわらかな風が吹いた気がした、、。


目的の駅へ到着し、私は深呼吸しノビをする。

よし、行くか!!

地図を片手に歩き出す。昨日の雨は嘘のように雲一つない良い天気だ。

こんな日に洗濯したらよく乾くのにな、、なんだか自分がおばさんに見えてきた。

彼の済むであろうアパートへ到着、、ここまで来て悩む。
しばし入り口前でうろうろ、、、。

「よしっ!!」
意を決してチャイムを鳴らした、、



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