「お待たせ!」
化粧室から出て来たユカリは、まったくいつも通りだった。
華やかな笑顔で、涙のあとなんて少しもなくて……
だから、泣いていた理由を―――聞けなかった。
「次はどこ行こっか。」
向けられた笑顔が、なんとなく痛い―――\r
無理してるんだろ?
俺にだって、そのくらいわかるんだよ。
本当はさっきの泣き顔も、俺に見せる気なかったんだろ?
ユカリは………誰の前で泣くの―――?
ギュッ
気付いたら、ユカリの手を握ってた。
強く強く、包み込むように……離れないように。
ユカリは驚いたみたいだけど、何も言わず握り返してきた。
そのまま二人、街を歩き出す。
聞きたいことはたくさんあるのに、言うべき言葉が見当たらない。
青空のした手をつなぎ、黙って歩きつづける俺達は―――どう見えるのかな。
普通の恋人同士に見えてるのかな。
見えてたらいいなんて思う俺は、どうかしてる。
「あっ!」
不意にユカリが立ち止まった。
「なに?」
「プリクラとろう!!」
「は?」
ありえねぇ!
「絶対やだ!」
「やだ!」
「あ?」
「やだったらやだ!とるのっ!!」
マジかよ……。