培ってきた時間を奪われる時は、ひどく残酷に、刹那だった。
僕の目の前を覆う絶対的な赤。
それが吹き出している源は、さっきまで僕の隣で笑っていた彼女。
辺りには赤く染まった雪。
皮肉にもその光景があまりにも神秘的で
しばらくしてサイレンの音が聞こえてきた。
ぴくりとも動かない彼女がストレッチャーに乗せられ、運ばれていく。
その様子を見ながら、不思議と冷静に事実を受けとめている僕がいた。
客観的にこの出来事を単なる事故と割り切っていた。
そうする他なかった。
警察はひき逃げ事故として捜査を進めていくらしい。
しばらくして辺りは閑散となった。
雪に染み付いた真っ赤な血を残して。
僕はしばらくその場に立っていた。
どうすればいいかわからずに
身の振り方を考えようともせず、ただそこにずっと、立っていた。
雪は、まだ止まなかった