「アタシ、涼が好きなんやけど・・・。」
運転席のえりかは、沙耶の家の前に車を止めながら言う。
「・・・・・・。」
外は雨。
助手席の沙耶は驚きもせずに溜め息をつく。
さっきまで盛り上がっていた会話がピタリと止まったまま、沈黙が続く。
気まずい空気が流れる。
「・・・アタシ達付き合おうって話しに・・・。沙耶、ごめん。」
沙耶は人一倍プライドが高い。
「・・・。謝られても微妙なんやけど。」えりかの「ごめん」にカチンときた沙耶。
「えりか、最悪。」
沙耶がえりかを睨みつけて言う。
「アタシが涼の事気に入ってた事、えりかが一番知ってたくせに、陰でコソコソ涼と会ってたんだ?」
沙耶の言葉に何も答えられないえりか。
「なんで、好きになったって打ち明けてくれんの?ミカから聞いたよ。昨日、涼と店出て行った事。」沙耶はえりかをジッと見つめる。
えりかはうつむく。泣き出しそうなのをグッとこらえる。
「じゃあ、何で沙耶は昨日、拓とどっか行ったん?涼を試してんの?」
えりかが言い返す。
「ごめん。悪いのは全部アタシなのに。でも、もぉどうしようもない程、涼が好き。ごめんなさい・・・。沙耶の為なら何でもできるけど、涼だけは諦められん。」えりかは言う。
「諦めて欲しいなんて、そんな事思ってない!!アタシが言いたいのは、何で親友なのに何も言ってくれんかったんかなって事!!」
沙耶は車のドアをあけて外に出る。
ドアを思いっきり強く閉めて、振り向きもせず家の中に入って行く。
外は大雨。
えりかの涙はどんどん溢れてとまらない。