星間諸侯ー元々は惑星植民が軌道に乗ってない時代の奨励策の設置にそれは由来する。
実は惑星植民はそう割りの良い事業ではなかった。
無限に近い処女地が開けていてもだからその開拓者は始終なり手不足だった。
そんな中、一部の篤志家が信じられない程の自己犠牲を発揮して惑星可住化・定住を細々とやり始めたのだ。
それに報いるべく各種の優待制度が適用されたとしても、だから批判には当たらなかったであろう。
しかもそれ等の大部分が世襲可能だとしても、他に委せるべき人士が見付かり難い時代が永く続いたのだから、一種の「家業」として継続して貰った方が合理的だったのだ。
彼等がやがて一つの層として形成された時、始めて星間諸侯の呼び名を頂戴したが、ただそれだけで全人類の鼻摘み者にすぐなった訳ではない。
銀河元号一四00年代から、彼等は金融・投機の道へと走り出した。
既にその頃までに莫大な富が蓄積されていた。
何千もの星系が星民もろとも転売され何十万もの企業がただ金儲けの為だけに処分された。
それでも現在、彼等の所有する資本は全銀河の総資産からすればわずか一%にも満たず、頭数に至っては五五0万家・二000万人に過ぎず、言われている程強大な勢力ではない。
しかし、それに何倍するインパクトを人々に与えるのは、やはり彼等の持つ文化・価値基準の尊大さ異様さであったろう。
血筋のみが人間の全てを決める血統原理主義は宗教化して彼等の閉鎖された社会は醜聞・奇行・悪行の一大温床と変質した。
地球時代末葉には公式上絶滅したとされるハイリスク&ナチュラルドラッグの濫用に始まり、一般星民へのリンチ・レイプは社会問題となった。
ネット集合体を通して宙際世論が彼等を激しく攻撃したのは至極当然の流れと言えよう。その中には近親相姦(結婚)・小児性愛・動物虐待・果ては食人(カリバニズム)に至るまで直接・間接に様々な証言・報道がなされ、少なくともその一部は実証されて、「銀河の癌・人類の恥部」とまで憎まれ出したのだ。
しかし、彼等を廃絶せよとの声は、当の対象の経済力・政治力の分厚い壁に阻まれ続けた。
糾弾に当たるべきマスコミも、只でスキャンダルを量産してくれる彼等を見捨てるに忍びず、やがて星間諸侯側の癒着と懐柔によって最後の一線を越える牙は何時しかひっこ抜かれていた。