「今一番何がしたい?」
「タクヤのもとへ行きたい」
当然の答えだ。
「、、、わかった。」
正直、辛かった。
彼女を見ていることが。
彼を独りぼっちにしてしまった罪悪感に溺れる母親の姿を見ていることが。
なにより彼に嫉妬している自分が、、。
私は覚悟を決めていた。
彼のもとへ向かう決意を。そのための問いでもあった。
彼女を乗せ、愛車をとばす。
彼が命を断った小高い丘へ向かう。
夜景がキレイで街がひとつの絵のように輝く。
車を止め、少し外に。
深呼吸をして、排気口を塞ぐ。
自分にはこれでいいのだと言い聞かせ、運転席に着く。
そっとエンジンをかけ、彼女を見る。
窓の外を静かに見つめている。
だいぶ細くなった首筋に優しく腕を回し、
「もう大丈夫だ、
ふたりでタクヤの
元へ行こう」
とささやいた。
不意に彼女の目から涙が流れ、
「やっとタクヤに逢えるのね」
と、優しく微笑みかけた。言葉なんていらない。
そう、、、
『タクヤの元へ、、。』
二人は、今、まさに幸せを手に入れたかのように、静かに寄り添っていた。