学校へ行っても何も頭に入らなかった。
―あの人はなんて名前なのかな…
気が付くと定期を拾ってくれた男子高生のことばかり考えている。
「かーりんっ!かりんってばぁ。」
マイに声をかけられはっとする。
「あっ…ごめんごめん。なんだっけ?」
「いい、いい。別にたいした事じゃないから。てかそれより、かりんどうしたの?なんかボケっとしちゃってさ。」
「え?そーかな。」
「うん。そう。何?恋でもしちゃった?」
―…恋…
「こらっ!かりん、またぼーっとして。はぁ。」
「ごめん。」
「あー、もういいよ。いつものことだからさ。」
帰りの電車でもボーっとしていた。そしてどこかに彼がいないかなんて少し期待しながら。
―なんなのかな…この気持ちは。
その日は、家に帰ってもまだずっとぼんやりしていた。