『ふぅ…いーぃ青だ』
真也は満足気に目を閉じ、呟いた。慎治と低レベルで卓球を語っていた頃が頭に浮かぶ。
体育館の外でユニフォーム姿は自分だけ、変に目立つのはわかっている。
だが、試合に万全で望むために必要な気分転換だ。次の試合は全てを出したい。
「真也ぁーっ!!コールあったぞ!早くしゃあがれ!」
『ごめん!ごめん!すぐ行くよ慎治』
慎治は苛ついた様子だ。真也は腰を上げた。
『先に行ってたら良かったのに……対戦相手と一緒に戦地に赴くのかぃ?』
真也はニヤリと笑った。
するとすぐに慎治に叩かれた。
「阿呆、行ったわ!テメーが遅いから呼びに来たんじゃねーか!!」
『後輩に呼びに来させりゃいいのに〜』
「うるさい…気分だ」
二人は話ながら、アリーナの扉を開けた。
トーナメント表のミスでベスト16にして同じ高校の選手が当たることになった。
顧問の先生が「抗議するか?」と訊いたが、二人はそろって首を振った。
願ってもないチャンスだった。
二人で腕を競い合って練習してきた。しかし、公式の場で戦ることがなかったため、どちらが強いかを決める機会がなかった。
『最後の大会…おあつらえの舞台だね』
「ふん…恥晒すのにか?」
慎治と真也はニヤリと笑った。それと同時に真也の顔が戦闘モードになる。
『恥晒すのぁテメーだよ。…全てを決めるぞ…!』
「上等だ…!」
二人は睨み合い、ラケットで互いを指した。
そしてラケットを同時に下げてから、真也が言った。
『練習は?』
「いらねぇ」
『ラケット交換は?』
「いらねぇ」
『サーブは?』
「やるよ」
真也は少し微笑むと、目を大きく開いてサーブを構えた。
そして、二人揃って昔から馴染みのかけ声を出す。
『「参る」』
【カシッ!カカッ!!】
真也のサーブは脇腹から出て、スピード系のサーブだった。慎治はそれをブロックしようとラケットを立てる。
【カッ カシュルルル!】
スピードだと思っていたサーブに強力なスピンが掛っていたために、ボールはネットで摩擦音を上げた。
「くっ…!」
『必殺サーブ《隼》…捕えてみな』
真也は不適に笑った。