【カッ!】【ガッ!】【キュッ…】
『…くそっ!』
真也のツッツキを慎治がカーブドライブで返し、真也がそれを空振って悪態をついた。
『タイム』
真也は手を上げた。このままではヤバイ…そんな気がした。
慎治との試合でタイムをとるのは初めてだ。
『ちっ…相変わらず大会とかになると…よく曲がる』
真也はタオルで顔を拭きながら言った。
「今日は…特に凄ぇ。今なら負ける気がしねぇよ」
慎治が台の向こう側で狂喜じみた笑みを浮かべながら言った。
『なに…!?』
「たまにあるだろ…?」
『ハッ…こんな時に…』
真也は少し泣きそうな笑みを浮かべた。
卓球をしているとたまにある…。反応・反射が極限まで高まり、次の相手の動きが読めて、球をどう返せば良いか解るようになる。
真也達はそれを面白半分で《覚醒》と呼んでいた。潜在能力が目覚めたような状態だからである。
真也は覚悟を決めて顔を上げた。
『君が今、覚醒してるってんなら……』
「フン…」
慎治が楽しそうに笑った。
『オレもこの戦の中で覚醒するまでさ…!』
試合再会の合図が出た。
『「サッ!」』
【カカッ!】
慎治が無回転の高速サーブ、スピードナックルを繰り出した。
【カッ、コッ】
真也はそれをラケットを立てて、レシーブする。慎治はそれを待ってた様にドライブの構えを取っていた。
「ふっ!!」
【ガシュ!カッ】
慎治のスピードドライブが真也のバック側に突き刺さる!
『…ォオッ!』
【キュキュッ!…パキッ!】
真也は約2m後ろに跳び、ドライブを《抜刀》の様な型で打ち返した。
「ッ!」
真也の放ったカウンターはスピードは速くなかったが、慎治のカーブドライブの様に、ネットの左端に向かったかと思うとそこから台の右角端に喰らいついた。
【カッ!……コン、コン】
予想以上に曲がったボールに慎治のラケットは追い付かず、ラケットの端に当たったボールは床に落ちた。
『新必殺…真横一文字!どうだぃ?』
「いちいち妙な名前つけやがって…」
慎治は狂喜の笑みを浮かべて真也を見た。
真也も楽しそうに慎治を見る。
『ハハッ、まだまだ楽しめるな…!』
「ハッ!すぐ終わらせてやるぁ!」
『「サッ!」』