インドア派の子供たちしかいない住宅地を通り抜け、公園探しを続ける俺と日下部。俺はもうどうでもよくなってたが。万歩計も今日のノルマ一万歩をとうにカウントしてるし。
「この先は…小学校がある辺りだな。」
母校ではないが。
「なら間違いなく公園があるはずですね!」
「…なぁ、本気で遊具で遊んでくつもりなのか?」
恥ずかしいし、小さいだろうし勘弁して欲しいのだが。
「むぅ、なら無人だった場合には遊ぶということで。」
小学校近くの公園が、昼頃無人であるなど有り得るのだろうか。
休日の昼というのは意外に子供は少なかった。昼食だったり、家族と出掛けたり。はたまた家の中で遊んでいたり。
そして、その結果。
「笠木くーん、登ってきてくださーい。」
俺は遊具で遊ぶことになってしまった。
寂れた公園のせいか、散歩する老人すらいない。小学校の近くでこの状況はどうしたものか。
「さぁ、滑り台で風になりましょう。」
そんな落差2メートルの滑り台でスピード感を味わえるのだろうか。
「しょうがねぇな、まったく。」
まぁ、ここで登ってしまう俺も良くないのだろうが。約束したし仕方ない。
「さあさあ、並んで並んで。」
幅のある滑り台は、二人程度なら横に並んでも滑れそうだった。子供なら三人はいけるかもしれない。
とりあえず隣りに腰を下ろし、日下部を見た。
目が、爛々と輝いていた。
「…そんなに、楽しみか。」
「久し振りの滑り台、興奮しないわけがどこに?」
「いや、わからんけど。」
「なら興奮するしかないんです!」
日下部は俺の肩をグイッと掴み、滑り台にあるまじき初速で滑り始めた。
「この二秒間、私たちは風に!」
「うおお!?」
不意に加速させられたために、俺は着地のタイミングを外し、日下部が俺を掴みっ放しだったこともあり、俺の後頭部はしたたかに金属の光沢を見せる斜面に打ち付けられた。
「ぐあ!?いっ…痛!?」
「おう、デンジャラース。」
「て、てめぇとはもう滑り台なんか絶対乗らん。」
日下部は俺にトラウマを植え付け、ジャングルジムへと走って行った。
結局ブランコや鉄棒などに付き合わされ、俺は過労で倒れそうだった。夕方まで無停止で遊び続けるなんて、こいつは核動力でも積んでるんじゃないだろうか。
ボタン電池の俺は、フラフラと家に帰り、さっさと寝ることにした。