「今一番何がしたい?」
、、、と。
すべての感情を捨てたと思っていた私の口から
「タクヤのもとへ行きたい」
と発したときは自分でも驚いた。
さらに、
「、、、わかった。」
との夫の言葉が信じられなかったが、私は夫に体を委ねた。
どれくらいだろう。外に出たのは。
夫の運転である場所へ向かう。
そこは、タクヤが命を断った小高い丘。
街が一望でき、ちょっとした優越感に浸れるような場所。
車を止めた、。
夫は外へ。
その日は、朝から雨。
今は、私たちを見守るように静かに降る。
しばしぼーっとしていたら、夫の腕が首に回り、
「もう大丈夫だ、
ふたりでタクヤの
元へ行こう」
とささやいた。
完全に不意をつかれ、目から涙が流れた。こうなっては止められない。
「だから、
ゆっくりおやすみ」
夫を見つめ、軽くほほ笑み、
「やっとタクヤに逢えるのね」
一言出すのがやっとだった。
夫に抱かれ、静かに目を閉じた。
二人に言葉はいらない。
『タクヤの元へ、、。』
二人は、今、まさに幸せを手に入れたかのように、静かに寄り添っていた。