with、、、?〈エリ〉2

由彩  2007-04-08投稿
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「今一番何がしたい?」

、、、と。
すべての感情を捨てたと思っていた私の口から

「タクヤのもとへ行きたい」

と発したときは自分でも驚いた。
さらに、

「、、、わかった。」

との夫の言葉が信じられなかったが、私は夫に体を委ねた。


どれくらいだろう。外に出たのは。
夫の運転である場所へ向かう。

そこは、タクヤが命を断った小高い丘。

街が一望でき、ちょっとした優越感に浸れるような場所。

車を止めた、。

夫は外へ。
その日は、朝から雨。
今は、私たちを見守るように静かに降る。

しばしぼーっとしていたら、夫の腕が首に回り、

「もう大丈夫だ、
 ふたりでタクヤの
 元へ行こう」

とささやいた。
完全に不意をつかれ、目から涙が流れた。こうなっては止められない。

「だから、
 ゆっくりおやすみ」

夫を見つめ、軽くほほ笑み、

「やっとタクヤに逢えるのね」

一言出すのがやっとだった。
夫に抱かれ、静かに目を閉じた。
二人に言葉はいらない。


『タクヤの元へ、、。』



二人は、今、まさに幸せを手に入れたかのように、静かに寄り添っていた。

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