航宙機動部隊44

まっかつ  2007-04-08投稿
閲覧数[935] 良い投票[0] 悪い投票[0]

星間司憲(スターポリス)の対応は、対照的に懇切丁寧で、誠意に満ちたものだった。
さっきの展望区画でパネルカードで通話を試みたリクに対して、エグムント=ファルフナー局地捜査官は即時の調査を約束したが、連絡を終えた観戦武官首席の顔は意外にも寧ろ曇りの度合いが強まっていた。
『…たった一人かよ…』
パネルカードを閉じて自身の懐にしまった少年は、ベンチに座ったままそう失望を口にした。
そう、最外縁征討軍全体を管轄すべく置かれた星間司憲の要員は、今しがた出て来たエグムント局地捜査官しかいないのだ。
これでは強大な権限だの組織力とやらも発揮しようがない。
仕方なくリクは一たん自分の居住エリアへと戻る事にした。
既に、時間は午後に入ろうとしていた。

『どうしたの?お正月から働くなんて?』
いつもの書院造りの離れにて、いそいそと調べ事を始めた彼に、国家監察官は後ろから怪訝そうな表情と視線で迎えた。
『働かなくちゃいけない理由が出来たのさ』
畳座敷に正座して漆塗りの唐机に開いたパネルカードから投影された平面ホロ画面を見据えたままの姿で、リクはそう答えるのみだった。
両手は同じ母体から展開された光像キーボードの上に置かれ、恐ろしい早さで打ちまくっている。
やがて、アドレナリンに煽られまくったままの十指が前触れもなく止まり、
『…こいつだ』
画面を占したとある人物の顔に、少年は険のこもった言葉を向けた。
その背中越しに膝立ちのまま、煎餅をかじりながらテンペ=ホイフェ=クダグニンは画面を眺めていたが、
『何調べてるかと思ったら…フーバー=エンジェルミじゃない』
それを聞いてリクはすぐに彼女へ顔を向けた。
『知ってるのか!?』
『中央域で一度会ったわ』
すると、観戦武官首席は体毎彼女へ向き直った。
『どんな奴だった!?否、煎餅は後で!』
『典型的な太子党よ。傲慢・我儘・尊大・横暴!本当、イヤな奴だったわ』
少女の麗顔が憤りに紅潮した。
どうやらかなりの事があったらしい。
『そのイヤな奴がな。ついさっき俺の目の前で、人を二人殺したんだ』
流石にそれを聞いて、テンペは絶句してしまった。
その時、二人のパネルカードが一斉に点滅し、別々の着信音を奏でた。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 まっかつ 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]
乾燥でうめぼし肌
⇒改善はこのクリーム


▲ページトップ