普段この町外れの狭い公園に遊びに来る子供は少なく、そのなかでもブランコやシーソーといった強豪遊具に人気が集中しているなか、地味な存在である砂場で遊ぶ子供はもっと少ない。
ましてやめったに掘られることもなく、固くなってしまっている砂場の角を80センチも掘ろうとする子供はまずいないだろう。
私は布性のリュックサックに入れていた、自信作である木製の彫刻の拳銃と、これまた最高傑作と呼べる、薬指のない左手の模型を、名残を惜しみながら穴の中へ投げ入れた。
暴力的な快感に浸りながら富士山を足で蹴りつぶし、もはやただの砂の塊となってしまっている通天閣共々、穴の中へ流しこんだ。最後に地表面の違和感を無くすためにぎゅっ、と踏み固め、公園の入口に停めてあるスクーターへと向かった。
お母さんのお下がりである、くたびれた革製の財布を見ると、先ほど、憧れだった最新機種の携帯を買ったため、残りは1万円ほどになってしまっていた。しかし、これから何を買おうか、新しい財布でも買おうか…と考えると気分か浮かれて来た。
グウ〜。
説明するまでもないが、腹部から発せられた空腹のサインである。
計画を実行に移した時以来そういえば何も口にしていない。
強盗事件が起きたことにより、あの牛丼屋の客は激減し、売り上げも一緒にガタ落ちする。そうなれば、店側は客を集めるため苦肉の策として、値下げをおこなうだろう。
復讐ができて、さらに大好きな牛丼の価格も下がって、まさに一石二鳥。
嬉々として私はスクーターにまたがり、最寄りの牛丼屋目指して闇に溶け込んだ砂場を後にした。
終…。