あの時おれはまだ子供だった。
父さんが家から出ていくのを見て
「お父さん行ってらっしゃい」
あれ以来父さんは帰ってくることはなかった。
父さんが出ていった日母さんは家で泣いていた。泣いていた母さんを見て俺は「何で泣いているの?」と、聞くと母さんは「目にゴミが入って痛いの」と、弱々しい声で答えた。
次の日、俺は父さんが居ないことに気が付いた。「お母さん、お父さんは?」母さんは、俺の前でしゃがみ、小さい俺を抱きながら一言いった
「ごめんね」
俺は何で謝るのかわからず、「どうしたの?」と聞いても母さんは泣きながら「ごめんね」と繰り返した。
あれから数年が経った。母さんはあの日以来父さんの代わりに働くことになり、家族を支えてくれている。
俺は母さんに少しでも楽をさせるために内緒でアルバイトを始めた。
それから一ヶ月働いた俺は初めての給料で靴を買ってあげた。
「母さん、今まで苦労をかけてゴメン。母さんこれからは一人じゃなく、俺のことも頼ってくれよ。」と言うと母さんは泣きながら「ばか息子が何いってるんだい」と一言いった。
俺はこんな母さんが好きだ。少しでもいい、今まで苦労してきた母さんを今度は死ぬほど楽