最後の嘘3

カトリ  2007-04-10投稿
閲覧数[634] 良い投票[0] 悪い投票[0]

悟がブラウスのボタンに手を掛けたとき
「…や。」
由紀は拒んだ。

悟は由紀の顔をのぞきこみ
「ダメなの?」

「うん。これ以上は絶対だめ。」
由紀の強い意思を感じた。
悟は、それ以上の事を求める事はやめた。
「なか入って。コーヒー入れるよ。」

「お邪魔します。」

悟と由紀はそれまでの距離を埋めるようにたくさんの話をし、笑いあった。昔と変わらない、お互いの笑顔。やっと通じた想い。
ずっと一緒にいたいと思っていた。

ずっと…


由紀は子供を保育園に預け、週に4日ほど医療事務のパートをしていた。
一方、悟は航空会社で整備士をしていて夜勤明けなどは昼間時間があった。
二人は由紀の仕事のない水曜の昼間に会う事が多かった。…といっても、月に2回程だった。それ意外には電話とメールのみで会える時間はなかった。

二人が会うようになって5ヶ月たった頃、悟はずっと抱いていた疑問を由紀にぶつけた。

「なんで、セックスしてくれないの?」

何度も拒まれ続けた。
ずっと我慢していた。

これからも、我慢しようと思えばできるとおもう。
でも、理由は聞きたかった。


「しなきゃダメ??」

「そんな事ないけど、俺はしたいよ?由紀との愛情を実感したい。」

「気持ち、伝わってない?足りない??」

「伝わってるよ。でも、ごめん。俺も男だからさ…。好きな女といたらそういう気持ちにどうしてもなるんだよ。」

「…うん。」
由紀はうつむいたままいる
「由紀?
別に無理に考えなくていいから。
由紀がそういう気持ちになったらでいい。」

「…来週。」
「ん?」
「来週、しよう。」
悟は耳を疑った。
「由紀?」
あの時の顔と一緒だった。


幸せ?
再会したあの日、俺が聞いた言葉に対して、由紀が俺に見せた顔


なんでセックスしないかなんて、分かっていた。
罪悪感

俺と会う事だけでも由紀は物凄く後ろめたい気持ちを家族に対して持っていたのだろう。
それと同時に家族を思う気持ちは、おれに対しての罪悪感。

板挟みになって苦しんでいる由紀でも、一緒にいて欲しいと思っていた。

だから気がつかない振りをしていた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 カトリ 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ