『クソ…!』
漆黒を帯びた塊が音もなくアインを包んだ。
そして視界の全てが闇へと埋まっていく…
時が止まる。
全ての感覚が失われたように思えた。
(そうか…俺はジャックの魔法を喰らって…)
アインは目を開いてみるが、その瞳には光すら写せない。
ただ無限に広がる闇ばかりだった。
(手も…足も…感覚が…ねぇ俺は死んだのか…)
意識で思考しているアインにとってどの状況なのか、闇の中で立っているのか横たわっているのかすらわからない。
しかし、その意識も徐々に薄れていく。
”ケッ…その程度かよ!?”
”オラァ!どうした!?”
(…?神水のギースの声…)
頭の中にかつて戦った神水の守護者ギースの叫び声が響いた。
過去の記憶が蘇る。鮮明に…
(はっ…死ぬ瞬間って確か走馬灯のように記憶が駆け巡るんだっけ…はは…)
アインは自分の死を覚悟した。
敗北したのだと自分に言い聞かせる。
”目を覚ましてアイン!あなたはその女に騙されているのです”
今度はエリスの声。
(エリス……約束、守れなくてゴメン…)
”獄炎の守護者スウェンだ。よろしくな反逆者のアイン君”
”僕達は違う道を行く。アイン、君は君の道を進め”
”オレ、アンタニ会エテヨカッタ”
”それでも、リオはアインさんを信じるよ”
その場の光景や言葉が蘇っては消えた。
(ゴメン…みんな……。)
いつかこうなる事は覚悟していた。
敵とはいえ自分を反逆者として追ってくる者達をことごとく斬り捨てた。
戦って散ったのだから本望なのかもしれない。
”…ン!”
誰かが呼んでいる。
”…アイン!!”
その声は自分の内に響いた。
マナだ。
彼女が自分を呼んでいるのだ。
(マ…ナ?)
(そう…だ、戻らないと…マナを守らなきゃ…俺が…守らなきゃ…守るんだ!)
『くっそぉぉお!!!!』
闇の中で叫んだ。
そして、あの時の力がアインを包んだ。