「しちゃったね」
先輩はそう言ってあたしを抱き締めた。生まれて初めての男の人の腕の中。香水と汗の匂いが少し香った。あたしはその匂いをとても愛しく感じた。あたしが初めて「男性」を強く意識した瞬間だった。私の心は完全に先輩に奪われてしまった。止められなかった。私は先輩の背中におずおずと手を回した。先輩が抱き締める腕の力が強くなって、まるで包まれるみたい。小柄な私の体はすっぽりと先輩の胸の中にいた。嬉しかった。時間が止まればいいのに…強くそう思った。
しばらく抱き合っていた私たちだけどだんだん腕の力が緩んで私が先輩からちょっと離れて見つめると
「帰ろうか」
って言って笑った。
「はい…」
私はいきなり恥ずかしくなって先輩の顔が見れなくてうつむいたまま答えた。
「どうした?」
「いや…なんでもなぃですよ。」
「でもうつむいたままじゃん?」
「なんでもないんですっ///」
先輩がしゃがんで私の顔を覗き込んできた。
「…真っ赤?もしかして…照れてんの?」
「いっいけませんか!?」
「かわいぃっ!!」
先輩はいきなり叫んで抱き付いてきた。
「きゃあっ!!先輩!?」
「もう一回…」
「えっ!?んぅ…」またキスされた。今度はさっきより長く。私の頭の中は限界だった。拒むこともできず先輩のされるがまま。ダメなのに…。でも私はどうしても拒むことはできなかった。私たちは墜ちた。