吸血鬼無想?
暗闇の中、多くの吸血鬼が蠢いていた。その中央に、まだ人らしい面影を宿した吸血鬼(恐らく日本のものなのだろう)が縛らていた。
周りを蠢く、吸血鬼達が一斉に彼に群がった。
その光景を冷ややかに見つめる影があった。
「ふふ…これでまた一人…私の子供が増える…」
影は歓喜の表情を見せた。その微笑みは処女のように優しく、女王のように残忍だった。
「ソフィア様…」
名を呼ばれ、影は姿を表した。輝くような金色の髪に整った顔が神々しく感じられた。その姿はレイナに通じるものがあった。
「どうしたのですか…このようなところにお一人で…?」
闇から姿を表したのは若い青年だった。しかし、顔にあどけなさはなく、毅然とした何かが、彼を際立たせていた。
「姉の気配を…感じるの…」
「気配…ですか」
青年は首を捻った。ソフィアは優しく頷き、つづけた。
「私と姉は母こそ違うけど、いつもつながっているの…とても近くて…強い気配…姉さん…私を殺したいのね」
ソフィアは身悶えし微笑んだ。青年は押し黙って、彼女の言葉を聞いていたが、やがて言った。
「初めてです。あなたが私にそのような私事を話すのは…あなたにも家族がいるのですね…」
やさしい微笑みに隠れ、かすかな憎悪が彼の中をよぎった。しかし、そのことに彼自身気づくことはなかった。
「あなたは違くて?」
ソフィアの腕が青年に伸びた。青年は表情を変えない。
「私はあなたの従者…あなたに命ぜられるがままに生きます」
「もし、私が死ねと云ったら?」
「死にます」
「あなた…つまらない人ね…」
ソフィアは溜め息をついた。彼はひざまずいて云った。
「私はあなたを愛しています。…あなたが哀しむのなら、哀しみごと…あなたが望むなら、その望みごと…私はあなたに従います」
ソフィアは満足げに微笑みをむけた。
「楽しみね?プロフェード…」