ケガが完治し、フミに快気祝いをしてもらうことになった。
二人で居酒屋へ行き、ダラダラと飲んでいた。
フミのちょっと抜けたところが可愛いと思った。
お互い、酔っていた。
帰り際にフミが真面目な顔で私に聞いた。
『リカは僕にいつも本音で接してくれてる?』
ドキッとした。
お酒のせいもあり、一度上がった心拍音は小さくなってはくれない。私はこの緊張がとても苦手だった。
何も言えず、うつ向く私は気がついたらフミの腕の中にいた。
『リカの本音が知りたい…。』
フミが私の頭の辺りで呟いた。
何か言わなくちゃと思うのに、上手く言葉が出て来なかった。
私はフミから少し体を放して、何か言おうとフミの目を見た。
視線は自然と唇に移った。私の意思とは違い、本能だったのかもしれない。
そうするのが当然のように、私たちの唇は重なった。
私の胸は鼓動よりギュッと締め付けられるような切なさを感じていた。
後に他の男性とキスをした時、こんな感じはしなかった。
私の言葉は無くとも、私の気持ちは唇から伝わり、私たちは恋人になった。
夏の終わりの、雨上がり。フミの胸も同じくらい高鳴っていた。