もうひとつのイソップ物語3

つぼみ  2007-04-12投稿
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そんなきりぎりすのヴァイオリンは、朝から晩まで草原に鳴り響いていた。それを喜ぶ者もいれば、不愉快に感じる者もいる。
夏の眩しい日差しの中、時を惜しむように働いているのはありたちだった。冬の間家族が食料に不自由することがないようにと今から食料を集めているのだ。
中でもそこの主は、誰よりも熱心に働いた。歳はきりぎりすと同じ頃だ。しかし彼は、きりぎりすとはまるで違い家族を守るため父親として懸命に働いていた。
そんな彼は、食うや食わすの暮らしをしながら一日中ヴァイオリンを弾いているきりぎりすを見て、どこか軽蔑していた。音楽が嫌いなわけではなかったが、汗水流して働いている最中に耳にするその音色は、ときにうとましく気持ちを苛立たせるのだった。
こんなふたりだったが、一緒に遊んでいた頃もあった。幼い頃は、草笛の吹き比べをしたり、今はなききりぎりすのお父さんの曲に合わせ大声で歌ったりもしたものだ。しかし、時が経ち互いに成長するにつれ、ふたりの生き方はまったく違うものとなった。
今では、言葉を交すことすらない。
たった一度だけ、ありはきりぎりすに尋ねたことがあった。

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