『ま、まだだ!まだ終わっちゃいねぇ…』
吐血しながらジャックは立ち上がる。
すでにその足元には鮮血が散っていた。
『もうよせ、お前に剣を握れる力はない』
『黙れ……終わっちゃ……いね…』
力なくジャックは再び倒れた。
『小僧の勝利…だな。』
翼を畳みレグナが言う。
『アイン。傷を見せて』
駆け寄っていたマナが治癒の魔法を唱え始める。
『本当に…これでよかったのかな』
アインは倒れているジャックに目を向ける。
『友情、愛情などの感情は己を惑わす、それらを捨てなければ人を斬れまいて』
どこか非情な口調でレグナは吐き捨てた。
そして翼を広げ、羽ばたく。
『行くぞ、小娘。外で待っておる…まだトドメをさしておらぬのだろう?』
レグナは気付いていたのだ、ジャックを討っていない事を。
それもそのはず、討ったならば神風の鍵は解放されるはずなのだから。
すでに飛び立ったレグナとマナを見送る。
空を見上げる。そこに曇り一つない青い風景が広がっている。
こんな青空の下で自分は友の命を奪おうとしているのだ。
『ジャック……今まで、ありがとう』
横たわる親友を目掛け、剣を翳す。
『…セエレだけは、殺さないでくれ…』
虚ろな視線を空に向けたままジャックが言った
時折、吹いてくる風が彼の青髪を揺らす。
『約束しよう…』
『へっ…』
両頬に熱いものが流れているのにアインは気付いた。
親友との別れをこんな形で告げようとは。
いつの日だったか、幼き頃に誓いを立てたことが思い出された。
−いつか、騎士団の団長の座を目指そうぜ?アイン−
−二人は無理だよ、一人しかなれないんだって〜−
−じゃぁ俺が1番強いから、きっと俺だな!−
−あっジャックずるいよそれ−
『ありがとう…さよならジャックッッ…』
アインは哀しみの剣を振り下ろした。
神風の搭は解放されたのだ