ナイト・オン・ドラグーン【91】話 『獅子の命ここに絶つ』

みるく  2007-04-12投稿
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『ま、まだだ!まだ終わっちゃいねぇ…』

吐血しながらジャックは立ち上がる。
すでにその足元には鮮血が散っていた。

『もうよせ、お前に剣を握れる力はない』


『黙れ……終わっちゃ……いね…』

力なくジャックは再び倒れた。


『小僧の勝利…だな。』

翼を畳みレグナが言う。

『アイン。傷を見せて』

駆け寄っていたマナが治癒の魔法を唱え始める。


『本当に…これでよかったのかな』

アインは倒れているジャックに目を向ける。

『友情、愛情などの感情は己を惑わす、それらを捨てなければ人を斬れまいて』

どこか非情な口調でレグナは吐き捨てた。

そして翼を広げ、羽ばたく。

『行くぞ、小娘。外で待っておる…まだトドメをさしておらぬのだろう?』



レグナは気付いていたのだ、ジャックを討っていない事を。

それもそのはず、討ったならば神風の鍵は解放されるはずなのだから。

すでに飛び立ったレグナとマナを見送る。

空を見上げる。そこに曇り一つない青い風景が広がっている。

こんな青空の下で自分は友の命を奪おうとしているのだ。


『ジャック……今まで、ありがとう』

横たわる親友を目掛け、剣を翳す。

『…セエレだけは、殺さないでくれ…』

虚ろな視線を空に向けたままジャックが言った
時折、吹いてくる風が彼の青髪を揺らす。

『約束しよう…』


『へっ…』

両頬に熱いものが流れているのにアインは気付いた。

親友との別れをこんな形で告げようとは。


いつの日だったか、幼き頃に誓いを立てたことが思い出された。


−いつか、騎士団の団長の座を目指そうぜ?アイン−
−二人は無理だよ、一人しかなれないんだって〜−

−じゃぁ俺が1番強いから、きっと俺だな!−

−あっジャックずるいよそれ−




『ありがとう…さよならジャックッッ…』
















アインは哀しみの剣を振り下ろした。



神風の搭は解放されたのだ




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