ヤス#32

チャーリー  2007-04-13投稿
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ヤス#32
家に連れて帰るのは問題ないと思っていたが、島の人間の目が煩そうに思ったのだ。ひょっとしてアイが消えたかと思い、振り返った。だが、相変わらずハヤトと一緒について来ていた。ヤスと目が合うと、優しく微笑んだ。ヤスの頬が赤く染まる。
家に着いた。勝手口から土間に入ると、母の純子が夕食の準備をしていた。
「お母さん。お客さんだよ」
振り向いた純子が怪訝そうに見ている。
「お客さんって…どこ?」
「うん。船が遭難したらしくてね、岩場に打ち上げられていたんだ。着るものとご飯を食べさせてやってくれないかな…」
「ヤス…大丈夫?熱でもあるの?」
純子がヤスの額に手を宛てた。ヤスは振り向いた。アイは後ろで静かに佇んでいる。
驚いた事に着ている物も、先ほどまでのボロではなく、真っ白で、肌が透けそうな薄い布を巻きつけるようにして纏っていた。
ヤスは、夢なのかと頬をつねってみた。痛い。額に宛てられる母の手も暖かく、紛れも無く現だと思う。ヤスはようやく気付いた。母親には見えないのだ。と言うより、自分にしか見えないのだろう。「ヤス…大丈夫なの?」「あ…うん。大丈夫」
ヤスは肩を落として納屋へと消えた。

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