吸血鬼無想?
霧燈島の森に銃声が響いた。銃弾に当たった吸血鬼が血を吹き出し、消える。
「しつこい…」
レイナは吸血鬼を振り払うように駆け出し、森の奥を進んだ。吸血鬼達は群がり、四方から彼女を囲むように襲いかかる。
一瞬、閃光がはしった。
レイナを取り囲む吸血鬼達はバラバラに切断され、無数の肉塊のみが残った。
「ブラッド…」
彼女の前にタキシード姿の男がダガーを構え、立ちふさがっている。その顔に表情はなく、奇妙な呼吸音が聞こえる。
ブラッドと呼ばれた男はかつて、レイナの同業者であり、恋人のような関係だった。だが、その肉体を吸血鬼に喰われ死亡した。しかし彼は、その能力を惜しんだ科学者たちにより蘇生させられ、自我を持たない殺戮マシーンとして蘇った。現在、レイナと再会した彼は唯一蘇った感情に従い、彼女と共に行動している。普段は棺桶の中で眠っている。
「ブラッド…ゴメンね、ありがとう」
「……」
彼の表情は変わらない。その目だけが妖しい輝きを放っている。レイナは僅かに微笑んだ。
突然、二人の後ろから、唸り声が響いた。後ろを振り向くと他の巨大な吸血鬼が襲いかかって来ていた。その姿はすでに、人の形を留めていなかった。
「変異種か…!」
レイナは銃を向け、巨大吸血鬼に発砲した。しかし、銀の弾丸をくらいながらも、吸血鬼は進行を止めなかった。
「クッ…」
レイナは日本刀を構えた。ブラッドもダガーを構え直し、襲撃に備えた。だが次の瞬間、巨大吸血鬼は二人の前で真っ二つに分かれ、その巨大な体躯が大地に崩れ落ちた。
「華の17歳!村雨幸司、見参!」
「やっと、追いついたぜ?参ったぜ。まったく…」
巨大な体躯の影から、上半身裸で羅喉を携えた幸司と、ややすすけた天馬が現れた。