由紀と別れて一月程すると、悟は新しい恋人を作った。
同じ会社に勤める、一つ年下のキャビンアテンダントだ。以前から悟に好意をもってくれていた。
由紀を忘れたい一心で恋人を作った。それでも、ほんの些細なことで、由紀を思い出した。
由紀が好きなカフェオレ、由紀が持っていたバッグのブランド、一緒に歩いたことのある道、カラオケで由紀がよく歌っていた歌。
胸が苦しい。
彼女にキスしても、抱き合っても、満たされることのない想いは、悟を苦しめ続けた。
…由紀…
由紀を苦しめたくなくてついた嘘。
自分は苦しんでもいいと思っていた。すぐにではなくても、忘れられると思っていた。
でも、その嘘は、自分を守るためでもあった。
きっと、無理をして由紀との関係を続けていたら、由紀のほうから別れを切り出してきただろう。
体の関係をもてば、ますます由紀にのめり込んでいただろうし、そうなってから別れる事など、想像しただけでもおかしくなりそうだった。
悟は、酒を呑む事が増えた。
自宅に帰ると、すぐに冷蔵庫に向かいビールをあける。
酒に頼らないと、眠れない日々が続いていた。
クリスマス間近、悟は恋人と買い物をしていた。
クリスマスに指輪が欲しいと彼女にねだられ、一緒に選びに来ていた。
横でどれにしようか迷っている彼女の事でなく、由紀に似合いそうな指輪を探していた。
自分で最低な人間だという事は自覚している。
それでも、誰かに側にいて欲しかった。触れたかった。
…愛されていると、実感したかった。