2月
由紀は半年前のクラス会で久しぶりに顔をあわせた友人とランチをしていた。
憂鬱な水曜日も、外に出かけて気分転換が出来るようになっていた。
「また、みんなで食事でも行こうよ。私、香織とメグに声かけるからさ!由紀は悟に連絡取って?」
「…う〜ん。」
あやふやな返事をする。
「?…由紀が呼ばないと悟来ないよ?」
「そんな事ないよ。悟、社交的じゃん。」
「だって、これまでもずっとそうだったの!たまにみんなで食事って時も前回のクラス会も。こないだのクラス会だって、由紀の出席を幹事に確認したから来たらしいよ?」
「…へぇ…」
「悟には合コン、セッティングしてもらいたいし、どうしても会いたいのよ!由紀!お願い☆」
最悪な流れになった…
「今、悟に電話しよう!」
理花は携帯をバッグからとり出した。
「ちょっ…理花!」
すでに受話器を耳に当てている。
悟と話など、出来るはずがない。
けれど、友人に二人の事情を話す訳にもいかなかった。
「あ。悟?今平気?」
「そ? この間言ってた合コン!よろしくね!…うん。こっちは、あたしとメグと香織!
由紀は人妻だから無理だけど連れて来いって言うなら自分で交渉しな?」
理花が由紀に携帯を差し出す。
由紀は渋々受け取るが、携帯を耳に当てるのが怖かった。
悟もきっと困っているに違いない…
「もしもし?悟?」
不自然にならない様に由紀は口をひらく。
『…由紀。…
元気か?』
悟の声…
胸が高鳴る。
「…うん。ぼちぼち。悟は?」
あふれ出しそうになる涙と言葉をぐっとこらえる。
『ん…。元気だよ。合コンだって。
由紀には迷惑な話だよな…』
「…人妻に合コンはないよねぇ…でも、みんなにも会いたいし行ってもいい??」
悟に会いたかった。
自分でも馬鹿な事を言ってるって分かっていた。
悟も呆れているって…
それでも…会いたい
『…由紀が平気なら来て』
「…うん」
携帯を理花にわたし、由紀は席を立った。
「トイレ行ってくる」
時間が解決してくれると思っていた。かき消せると思っていた。
悟の事を忘れる事など出来るはずがなかった。