AIJI  2007-04-15投稿
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夕凪、何一つ音の無い世界で貴方から愛を教えてもらいました。





―貴方に出逢うまで、私は愛というモノを知らなかった。
与えられる温もりの安堵も知らないまま、他人を拒絶するように生きて来た。
優しい言葉は上辺だけ。所詮偽善で溢れている、と。
背を向けて耳を塞ぐ。
何も感じない心は、真っ白な表面に一つ一つ、刺が生まれ誰も触れる事は無くなっていた。



「悲しいね」


突然、
蝋燭の火のように、灯ってくれた貴方。
言葉を否定しようとも、何度手を振り払おうとも、私の刺に触れて来た。
一言で胸のざわめきが声を上げる。
ざわ、ざわ、込み上げる鼓動は無音を弾いた。

悲しい、哀しい、愛しい…

独りぼっちで、悲しかった。
私は、寂しかった。
信じたくて、本当は耳なんて塞ぎたくなかったけれど。
ねぇ、何で、こんな風になってしまったの。

生まれ変わりたい。



「心はいつも、一つだよ」

だから代わりなんて無いから、リセット出来る筈だ、と。
幼子のように泣く私の隣、貴方はいつも囁くように言葉をくれた。


手を、繋ぐ。
人の手はこんなにも温かいモノでしたか?
こんなにも、愛しいと感じるモノでしたか。

貴方が与える言葉が、
体温が、
私の全てです。




心に満ちる穏やかな風の音、刺を撫でて少しずつ治まりゆく。
前を、見よう。

今度はこの手で、貴方を救えるように。

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